日本内科学会雑誌 2020 11月号 コロナ特集:「リウマチ・膠原病とコロナ」が掲載された



新型コロナに負けないために

  
 人類の歴史は、はやりやまい(疫病)との闘いの歴史でもあります。ある病気が世界的に流行ることをパンデミックと言いますが、ペスト、コレラ、天然痘、インフルエンザなど急性の疫病は何度も襲ってきました。今はワクチンや抗生物質で制圧できる病気になっていますが天然痘(致死率16%以上)やペスト(同60~90%)は特に恐るべき病気でした。そこまでいかなくても、1918年から約3年間パンデミックになったインフルエンザ=スペイン風邪は世界中で4人に1人以上が罹り、致死率は2.5%ぐらいで、世界で5000万人、我が国でも20万人以上が命を落としたとされています。
 今私達が直面している新型コロナウィルス感染症はその拡がりといい、致死率といいスペイン風邪とどこか似ています。今が20世紀初頭と違うのは、ステロイドなどの薬剤が使えることと呼吸管理など治療技術が進歩していることとに加え、何よりワクチンが使えるようになっていることが決定的に違います。
 
 ここでは、膠原病の患者さんがコロナに罹らないために知っておいて頂きたことについて書いていますが、まず次のことを確認しておきます。すなわちリウマチ・膠原病の患者さんは基礎疾患があるわけですからひとたび罹ると治療に何がしかの問題が起こることはあり得ます。患者さんは健康な人よりは日常の感染予防により心がけて下さい。


 コロナは人から人にうつる病気です。うつる病気は、1。うつす人(感染者、患者)、2.うつす経路、例えば痰やつばで汚れた空気など、そして 3.うつされる人の3つの要素が必要です。ですから対策は、1.うつす人をいなくする。つまり感染者や患者を早く見付けて隔離する(コロナではPCR検査)。人の移動を止める。検疫の徹底。2.痰や唾液などの飛沫を遮るために、密室、密閉、密着の3密を避ける。マスクをする。消毒する。3.感染可能な人をなくす。最良の現実的方法はワクチン接種。以上の三つの方法があります。このどれか一つが”完璧に”実行されれば疫病はすぐにでも収まります。しかし、生身の人間の作る社会では1,2 の対策が如何に難しいかはペストの昔からちっとも変わっていません。しかし、努力をすればそれなりの効果はあります。3 の有効なワクチンは感染予防、発症と重症化阻止のどの面においてもかなり信頼すべき効果があります。ただ残念ながら現在のコロナワクチンの効果は半年しか保たないようなので、繰り返し接種する必要があります。


1.普段の予防の心掛け

 新型コロナの病気はCOVID-19というウィルスの感染症です。罹るとひどい肺炎やその他の全身病変を起こす厄介な病気です。若者では、「カゼ」ぐらいで済むことが多いですが、高齢者では死亡率は数パーセントにもなる恐ろしい病気です。
 「感染」とはウィルスや細菌などが人体に「侵入して増殖」することをいいます。ウィルスなどが体内である程度増えると体調不良が起こってきて「発病」します。コロナでは感染しても発病前の一定期間やあるいはその後もずっと発病しないまま、発病した人と同様にウィルスをまき散らす人がいます。そういう状態を無症状キャリアといいます。コロナのようなウィルス性疾患ではこの無症状キャリアがいっぱいいます。現在、不心得?な若者の無症状キャリアが帰宅、帰省や旅行をして病気を拡げることが大きな社会問題になっています。
 COVID-19は咳や?会話などで感染者の口から出た飛沫に含まれているウィルスによって感染します。感染源になるウィルス保有者と1メートル以内で15分間ぐらい一緒にいたり、消毒せずに相手に触ったなどの場合は感染の危険が高いとされています。歩きながら、あるいはジョギングをしながら会話をすると、唾液は数メートル以上飛ぶとされていますから注意して下さい。知らない人とはそういう機会をできるだけ持たないようにしてください。
 できるだけ人に近づかない、もっと言えば人に会わないようにすることが感染防止の最善の方法です。不要不急の外出は極力減らし、人と会うときはマスクをしてお互いに大声を出さないことが大切です。
 患者やキャリアの口から空気中に飛び出た飛沫に入っているウィルスは約 3 時間感染力を保っていると言われます。また、汚染した手で触ったりしてウィルスが何か物体の表面に付くと、プラスチックやステンレスの場合は2~3日、段ボールの表面では1日、銅の表面では4時間ぐらい感染力を保っていると言われています。自宅以外で何かに触ったときはできるだけ頻繁に石鹸を使って流水で手を洗いましょう。アルコール消毒は有効ですが、手が荒れます。
 なお、コロナ患者は、発病2~3日前から人にうつす程のウィルスを出しています。知人、家族など身近で発病した人が出た場合、自分が罹った危険があったかどうかを知る上で大事なことです。一方、コロナが発病して、10日も経てばウィルスは排出されなくなり、普通に回復した患者はもう人にうつすことはないとされています。



2. もし、コロナに罹ったかな?と思ったときはどうする
 
 私は自分が外来で診ている膠原病患者さんがコロナを発病しましたし、一般外来に初診でやってきた患者さんがコロナだということもありました。彼(彼女)らに共通しているのは 、「昨日はどうもなかったのに今日は完全におかしい」、という急な体調不良を訴えてきたということです。よく知られているように、発熱、のどの痛みや咳など呼吸器症状が最初の症状として多いのでしょうが、私の診た患者さんには「4日前から突然食欲がまったくなくなった。」と訴えてきた人がいました。味覚が飛んでしまったのかも知れません。胸部CTで典型的コロナ肺炎が見つかりました。
 この時節、わけのわからない体調不良が突然起こってきたらコロナを考えましょう。かかりつけの、または受診予定の先生にまず電話をで相談して下さい。電話をせずにいきなり受診してはいけません。



3.ワクチン接種を受けましょう
 
 病状が落ち着いている膠原病患者さんは迷わずワクチン接種を受けましょう。維持量のステロイドやその他の膠原病治療薬を飲んでいたり、生物製剤や糖尿病があってインスリンの注射をしている人でも大抵問題ありません。念のため主治医の先生に尋ねて、許可を貰い、問診票の中程にある「主治医の許可の欄にチェックを入れておいて下さい。
 我が国で使われているファイザーとモデルナのワクチンは安全でしかも今までの各種ワクチンの常識を越えるほど有効であるとされています。いわゆる副反応として、注射翌日、特に若い人では38度近くの発熱やだるさなどが起こることがありますが、一両日休養すれば自然に治ります。ただ、比較的まれですが、接種後数日経ってから発熱や全身倦怠などを起こす人もあるようです。これも自然に治ります。一方、このワクチンの副反応として報道でよく耳にするアナフィラキシー・ショックを起こす人はまずいません。ただ、、以前何かの注射を打つなとした直後(5分以内)に呼吸困難やショックになったことのある人だけは主治医に相談し、接種会場でも申告して下さい。接種会場にはアナフィラキシー・ショックが起こってもその場で治せる注射薬が用意してあります。

 なお、ファイザー、モデルナのワクチンは現在まで主流変異N501Y (英国株)だけでなく、デルタ変異L452R(インド株)に対しても2回接種後は十分実用的な効果があるとされています。

 ワクチン接種について決して誤解してはいけないこと、それは「ワクチンは打ったらすぐ効くものではない」ということです。ある程度の効果が出てくるのには1回目注射から最低2週間かかります。十分な効果が得られるのは2回目接種の1週間後からです。ワクチン接種を受けて翌日から浮かれ出ることは厳に慎んで下さい(June 21)。

参考記事:山中伸弥による新型コロナウィルス情報発信=読むのに少し専門知識は要るが最も信頼できる最新情報が得られる。


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