メジロと写真機

 


 

Nikon D50、レンズ:AF-S DX Nikkor 55-300mm 200mm(35ミリカメラで300mmに相当  クローズアップモード、連写   写真はトリミングしてあります

 

『裏庭にメジロがやって来るので、デジタル一眼レフにはじめて望遠レンズをつけて写してみました。可愛く撮れた写真を見ながら、「絞りやシャッター速度など何も知らずにデジカメを使っている孫たちに写真の難しさ、面白さをどうやって教えようか」。そんなことを考えているこの頃です。』(原典:「ちょっといっぴつ」132文字)

 

の短文はわたしがかつて勤めていた大学の退職教職員会の会誌へ送った近況報告の原稿です。133文字以内という制限がありました。この短いメッセージにわたしの「写真」と「写真機」への思いを込めました。

 

第一部 メジロの写真

わたしの使っているデジタル一眼レフは世間では何故か初心者用とされているものです。使った望遠(ズーム)レンズもキットレンズと呼ばれる普及品です(下段写真右)。それでもこの写真機と望遠レンズでメジロを可愛く撮ることが出来ました。

 望遠レンズで動物などを撮るにはある程度の熟練が必要です。遠くにいる目標をファインダーで的確に捉え、狙ったところに一瞬でピントを合わせ、素早く、そして”深夜に霜の降るごとく”静かにシャッターを押さなければなりません。ライフル射撃と同じ心得です。わたしが昔、レンズ交換式の 35ミリ・カメラやマニュアル操作の一眼レフを使っていた頃、焦点距離135ミリの望遠レンズを二度買って、結局二度とも使い切れませんでした。この経験がトラウマとなって、望遠レンズはシロウトの手に負えるものではない、とずっと思ってきました。ですから、デジタル一眼レフを買ったときにも、おまけのようについて来た望遠レンズはパッケージの中で数年間開封されることもなく眠っていました。それが今回、裏庭にメジロがやって来てくれたお陰で、わたしは改めて望遠レンズを使う撮影に挑戦してみる気になりました。そして三度目の正直と言うべきか目出度く試みは成功しました。でも、この愛すべき一枚の作品を得るためにはフィルムなら二、三本分以上の無駄なシャッターを押し続ける必要がありました。

それだけ無駄撮りが出れば昔なら「またもや失敗!」と諦めたかも知れません。しかし、デジタル一眼レフを使った今回は、撮り損なっても「今度はうまくいくはずだ」という確信のようなものがありました。望遠レンズで遠方の動物を追う場合、かつては非常に難しかったピント合わせが今ではレンズに組み込まれた電動モーターのアシストによってうそのように簡単に出来ます。加えて、望遠の撮影では、気に入るようなアングルがなかなか得られなかったり、突然訪れるシャッターチャンスにあわてて手が震えたりして無駄なカットを撮ってしまうことが多く、かつてはそのために浪費されるフィルム代がバカになりませんでした。デジカメなら何枚撮ろうが出費を気にする必要などありません。「下手な鉄砲も数を撃てば当たる」のです。あとは根気と腕次第ということになります。愛すべきメジロたちのお陰でわたしにとって新しい世界が一つ開けました。

 

第二部 孫の写真機

 少し前、当時四年生と二年生だった小学生の孫兄弟が夏休みで帰省したときコンパクト・デジタルカメラ(コンパクト・デジカメ)をプレゼントしました。同じものをわたしも買って一人一台ずつ、三人お揃いで使うことにしました(下段写真左)。小学生へのプレゼントですからそんなに高価なものではありませんが、それでもコンパクト・デジカメとしては十分な実力がありました。彼らはすぐ庭の花を撮ったりして喜んでいました。そして後日、彼らは、真昼の太陽に直接レンズを向ける、というちょっとわたしには思いつかないことをやって、まんまと金環日食の撮影を成功させました。

 写真と写真機の勉強になるかも知れない、とこのプレゼントを思いついたのですが、その時わたしには何がしかの”ためらい”もありました。「コンパクト・デジカメなんぞ初心者向けとしては如何なものか?何の役にも立たないのではないか?」。この心配は半ば当たっていたように思います。彼らは、日食など、写真はいっぱい撮って楽しんでいますが、写真機そのものにこだわりを持っているようには見えません。やはり写真機の勉強をコンパクト・デジカメでやらせるのは無理だったようです。

 昔は、一枚の写真を撮るにも写真機について若干の知識は必要でした。それを面倒くさいと思う人もいたでしょうが、そのややこしさに興味を持つわたしのような人間も沢山いました。それに引き替えコンパクト・デジカメでは液晶パネルの被写体を見てボタンを押すだけで写真が撮れてしまいます。かつての写真機には必ずついていたシャッターと絞りと距離(ピント)を合わせる仕掛け、そしてフィルム巻き上げレバーや透視ファインダーなど全部消えてしまいました。そんなものは無くてもキカイがすべてうまくやってしまいます。そのように、ドジな人間が関わるところを無くしたり、隠したりしたことで、コンパクト・デジカメは写真機から”失敗する辛さと、それを克服するよろこび”も奪ってしまいました。逆説的な言い方をすれば、「写真機の入門用として使えるコンパクト・デジカメはどこにもない」のです。

 何時か必ず、孫たちにわたしの戸棚にある古き良き時代の写真機やレンズを教材にして、「難しい」写真機の「面白い」話をしてやりたいと思っています。たとえば、写真レンズは突き詰めて言えば、上等な青い虫眼鏡なのだ、とか、あるいは、ついこの間までの写真機では、うまく写ったかどうかを確かめる術(すべ)はなかったことなどを。(2013 EARLY SPRING)

 


コンパクト・デジカメ Nikon L23(左)とメジロの撮影に使った望遠ズーム装着のデジタル一眼レフ Nikon D50(右)

 


 

これぞ古き良き時代の ”写真機” Canon FTb & 50mm f1.4 レンズ

Canonの旧ろごが懐かしい



第三部 300mm望遠レンズ

このページのメジロの写真は焦点距離55〜200mmのキット望遠レンズで撮りました。この写真を見て、「いつかは300mmの望遠レンズを!」と思うようになりました。。

 望遠レンズの楽しさは使ってみて初めてわかります。それも、APS-C撮像素子の写真機用としては200mm望遠では力不足で、何としても300mm---フルサイズ換算だと450mmに相当---を使いたいものです(Nikonの場合)。下の写真左がダブルズーム・キットとして買い、めじろの撮影にも使ったNikkor 55-200mm、右、Nikon D50に装着してあるのが新しく入手した55-300mm zoom Nikkorです。200mmに比べると一回り大きく、D50に取り付けて持つと小岩のように重く、これがこのレンズ唯一の欠点です。
 超望遠レンズを手持ちで操るなどということはつい十年前まではとても考えられなかったことです。手ぶれ防止装置VRの普及によって今ではそれが出来るようになりました。Zoom Nikkor 55-300mm のVRは十分優秀で、購入当初から半年間で撮った写真で手ぶれしたものは全然といってよいほどです。これなら動きのある被写体を三脚無しで追うことが出来そうです。
 逆説的な言い方ですが、レンズ交換がうたい文句のデジタル一眼レフはレンズ交換にはあまり向いていません。理由は幾つかあります。ならばと1本で18-mmから300mmまでの広域をカバーするレンズを選べば当然大きくて重いので、ふだん一番撮影機会の多い広角や標準領域ではもてあますことになります。結局、望遠撮影には望遠レンズ専用のボディーを一台調達することが必要になります。
 300mmは被写体が限られる特殊なレンズですけれども、APS-C一眼レフで写真を楽しむのなら是非1本、それも連写能力の高い専用ボディーにとりつけて持っていたいというのが本音です。残念ながら私のD50はいかにも非力です。(Yahooブログ20016/6/25を転載)

 



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