うっ血性心不全の肝硬変


症例:32歳男性  うっ血性心不全(甲状腺機能亢進症と心房細動)による肝硬変状態

              血清蛋白分画量 ( (g/dL. 8/4 の図は絶対値が比較できるよう縮尺してある)

Date TP Alb α1-gl α2-gl β-gl γ-gl
8/4 6.6 3.0 0.18 0.38 0.50 2.5
11/18 7.8 4.3 0.30 0.59 0.99 1.6


                 他のデータ
 Date T.Bil AST ALT Ch.E (ΔpH)
Al.P (Bessy Lowry)
LDH
8/4 6.7 79 43 0.18 31.7 620
11/18 NA 30 36 0.63 17.9 297



 心電図は頻脈型心房細動を示し、CTR 50%、肝臓を右季肋下2横指触知した。
T3; 2.54 ng/mL, T4; 22.0 μg/dL とやや高値を示した。肝炎ウィルス抗原は陰性。 入院後抗甲状腺剤と強心利尿剤による治療で3ヶ月後の泳動図は右図のように見事に正常に戻った。

[コメント]
 図左、8/4 の血清蛋白像は定型的肝硬変と診断されるべきものである。うっ血性心不全患者が肝硬変に陥ることを cardiac cirrhosis (心臓性肝硬変) と呼んでいる。また、一般的に肝硬変とはウィルス性肝炎やヘモクロマトーシスなどさまざまな原因によってもたらされる進行性の肝臓病変の」終末像」であると定義されているが、心臓性肝硬変は原因となった心臓疾患がときに可逆性であるため、末期肝硬変相当の肝機能不全から回復し得る可能性があることをこの泳動図は示している。このようにいわば一過性の、あるいは可逆性の臨床的肝硬変は pseudo-cirrhosis とでも呼ばれるべき状態であって肝臓組織の荒廃、線維化によって完成した非可逆性の  cirrhosis ではない。これに似た経過が期待できるものにアルコール性肝硬変がある。

                                                              

                                                井上隆智




   
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