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血清蛋白分画 元大阪市立大学第一内科助教授 井上隆智 --------------------------------------------------------
総論 (各論の目次は本ページ下段)
血清蛋白分画像から何が読めるか
血清蛋白質は血清(血漿) 100mL に約 7 グラム含まれており、生命維持に必要なさまざまな機能を持ち、種類としては数万もあるといわれる蛋白の集合体である。 1937年に Tiselius によって電気泳動の技術が開発され、蛋白の持つ負の荷電の強さの違いを利用して電気的に血清蛋白を大きく5つの分画に分けることに成功した。 血清蛋白分画像から読みとれる蛋白の変化は、数から言えば血清蛋白全体のうちのほんの一部のものでしかない。 しかし、それはそれで臨床的にも十分価値のある情報を提供してくれている。 すべての蛋白が解き明かされるまでにはほど遠い現在、どこまで見えるかは別として、とにもかくにも生命にかかわる血清中の蛋白質全部が含まれる情報を余さず一度に表現できるのは血清蛋白像を措いて他にはない。 |
【 図 1 】 症例 58歳女性、抗SS-A抗体陽性血管炎.CRP 5.5 mg/dL. |
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赤い線が患者、 黒い線は基準値 |
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TP |
アルブミン(Alb) |
α1-gl |
α2-gl |
β-gl |
γ-gl |
この症例 |
8.4 |
3.7 |
0.28 |
0.93 |
0.73 |
2.8 |
基準値(g/dL) |
6.4-7.8 |
4.2-4.7 |
0.10-0.28 |
0.23-0.53 |
0.42-0.79 |
0.88-1.58 |
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各グロブリン分画を構成する蛋白成分(表2=パージ下段)
α1 分画 |
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α1- anti-trypsin (α1-AT): α1 分画のほとんどは α1-AT であるから、α1 分画の増減はこの蛋白によって決まる。 |
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α2 分画 |
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Haptoglobin (Hp): フェノタイプとして、Hp1-1、Hp2-1、Hp2-2 の 3 種類がある。 ヘモグロビン (Hb)のキャリアなので、体内で溶血が起こるとHbと結合して消費され測定限界以下にまで激減する。 また、急性肝炎など肝臓での合成障害があっても低値となる。一面、代表的急性期反応物質としてあらゆる炎症の場合に数倍にも増加する。 |
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β 分画 |
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Transferrin (Tf): 鉄のキャリアであり、鉄欠乏性貧血で増加すが、増えても 2 倍にまでなることはまずない。ネフローゼでは尿中への漏出によって 10mg/dL 近くまで低下することがある。合成が落ちる肝硬変でも著しく低下する。 |
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γ 分画 |
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IgG、 IgAおよび IgM: 慢性炎症、慢性肝炎、肝硬変、腫瘍、自己免疫疾患,、HIV 感染などで増加する。 |
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泳動図には反映されにくいが臨床的に大事な蛋白成分2つ
★アルブミン (Alb) の位置に泳動されるもの |
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α1-acid-glycoprotein (α1AGP): |
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Orosomucoid ともいう。炎症で容易に 200 mg/dL を越えるほど増加するが、ピークの位置がアルブミンとほぼ重なるので泳動図に姿を現さない。ネフローゼで著減する。 |
★α2 の位置に泳動されるもの |
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Ceruloplasmin (Cp): |
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銅のキャリア蛋白でウィルソン病はこの蛋白の欠乏によって起こる。 一方、 関節 リウマチなど炎症機転があるとき 100 mg/dL 近くまで増加することがある。 ピークの位置 が Hp とほぼ同じなので、炎症 のときα2 の増加をやや後押しする。 |
表2 この症例の蛋白成分の値
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α1-AGP |
α1-AT |
Hp |
α2-M |
Cp |
Tf |
C3 |
IgG |
IgA |
IgM |
本 例 |
212 |
213 |
312 |
211 |
44.5 |
161 |
133 |
3370 |
414 |
85 |
基準値*(mg/dL) |
39-85 |
170-274 |
19-170 |
130-250 |
21-37 |
200-340 |
86-160 |
870-1700 |
110-410 |
46-260 |
*基準値: 大阪市立大学医学部付属病院基準値
00/08/11
参考文献:井上隆智 血清蛋白分画をどう読むか 新しい把握の仕方 1988金芳堂 京都
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