貧乏マニアによる

オーディオ&音楽鑑賞入門

 井上隆智


写真説明:私のレコードプレーヤー。 カートリッジ(ピックアップ)=オルトフォンMC20,ヘッドシェル=オーディオテクニカ MS-10,  トーンアーム=マイクロMA505X、ターンテーブル=マイクロMB-400S(昭和44年製)、ケース(台)=ベニヤ積層合板を5枚貼り合わせくりぬき自作。 現用品」です。

 

 このページは、音楽とオーディオについて常々私が考えていることをつれづれなるままに書き留めるのを目的として作り始めました。私はオーディオ好きとはいえ高級品の音をあまり知りませんし、愛聴しているクラシック音楽についても素養があるとはとても言えません。楽器はウクレレ以上のものは使えません。バイエルを途中で落後しました。そのような人間がオーディオと音楽を語ろうというのですから、およそレベルは知れています。ですから、クラシック音楽に詳しい方はこれ以上読まないでください。時間の無駄ですから。でも、高級オーディオマニアの方は読んでくださって結構です。あえていうならこれは40年の経験をもつ元オーディオ・マニアからあなた方への挑戦状でもあるのですから。

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 一枚の「乙女の祈り」〜オーディオ入門の入門

 音楽は、演奏会に行くか、CDなどの録音された音源を買ってきて再生するか、どちらかの方法で楽しむことが出来ます。音楽会に行ける人は出来るだけ行きましょう。

 CDなどで音楽を聴くためにはそれを再生する装置、すなわち”オーディオ”装置(ステレオ)が必要です。おおかたの人はCDラジカセなど手軽な装置で音楽を楽しんでいます。これとは対照的に、再生装置に異常なこだわりをもつ人達がいます。彼らは、とどのつまり、音楽鑑賞を二の次にして、やれ「高音が堅い」の、低音がふくらんでいる」の、などといっては音楽の成分にすぎない”音”の善し悪しばかりを聴いております。そういう人々をオーディオ・マニアと呼びます。

 オーディオ・マニアの人は、「貧困な音で聴いていたのでは音楽の本当のよさなどわかるわけがない」と信じています。私もそれには反対ではありません。”高級な”オーディオ・マニア”は概して大変高価な装置を持っています。そして、あり合わせの機械で音楽を聴いているふつうの人を「ただの音楽愛好家」だなどとさげすんで呼んでいます。私はそれも理解します。

 私はどちらかといえば貧乏なので高価な装置を買うことが出来ません。でも、自分なりにはがんばって”それなりの装置”を組んできましたが、最近のカタログに載っているあまりにも浮世離れした高価な機器にはとても付き合いきれなくなりました。だから私は誇り高いオーディオ・マニアをやめることにしました。時々買っていたオーディオ・マニアのバイブル的雑誌「STEREO SOUND」は立ち読みにとどめることにしました。

 でも、良い音楽を良い音で聴きたい。そういう願望は今も昔と少しも変わりません。私に良い音に対するモチベーションを与えてくれたものの一つが日本のオーディオマニアの先駆者、故五味康祐氏の著書で読んだ次の一節でした。

 「ピアノの弦はハンマーで叩くのではない。フェルトで叩くのである。だから柔らかさのなかから(美しい)高音が抜け出なければならない」。

 この五味さんの言葉を実感することはさほど難しくはないと思います。あなたがもしラジカセかヘッドホン・ステレオしかを持っていないのなら、あなたの友人で、ある程度以上の再生装置を持っている人に、録音のよいピアノ曲を一曲聴かせてもらうとよいでしょう。代表的なクラシックのピアノ曲、「乙女の祈り」などが最適です。右手で弾かれる高い音が、「ころころ」と柔らかく抜けますか。わずか4分ほどのこの曲を耳を澄ませて聴き通すことができれば、あなたはもう立派なクラシック音楽愛好家ですし、オーディオの理解者になっています。

 さあ、CDラジカセではなく、さりとてばかげて高価なものでもなく、しかも、五味さんの言葉のようにに鳴ってくれる再生装置を手に入れて音楽を楽しみましょう。

 

 参考:私の持っているCDのなかで、演奏も録音も最も優れている「乙女の祈り」は、「エリーゼのために〜子供のためのピアノ名曲集」(DENON -COCO 7034;千円盤、2005年現在販売中)というアルバムに収録されている、イリーナ・メジューエワの演奏です。タッチが丁寧だし、情感も豊か。録音は何故かこのCDのなかでこの曲だけ飛び抜けて優秀です。床を這う低音が確かに収録されているのでどっしりしたフル・コンサート・グランドピアノがまるで眼の前に置かれているかのように感じられます。また、高音の音色が大変綺麗です。いっぱいある”高級な”ピアノ曲のCDでも、これだけの録音に出会えることは滅多にありません。この曲はペダルを多く使って音を響かせるように作られているのでしょう。そのため調律とうまくかみ合うと相乗効果が大きいのかも知れません。それにしても「乙女の祈り」のベスト・バイなんて本や雑誌あるいは新聞などで見かけたことないですね。音楽ジャーナリズムが、無名の18歳の小娘が作曲した、”こんな曲”をまともに取り上げるのは沽券に関わるとでも思っているのだとしたら、それは大間違いです。かのベートーベンが「バガテル=取るに足らないもの」という曲集に自ら放り込んだ「エリーゼのために」よりは「乙女の祈り」のほうがずっと情緒があります。音楽を楽しむ幸せを一人でも多くの人と分かち合いたいと思うなら、プロは、こういう曲のよさをこそ語ってほしいのです。

 もしこのCDを聴いて、私の言っていることが嘘だと思う方は、クラシックもオーディオとも今後付き合わないほうががよろしいでしょう。

 

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 謝辞:私にクラシック音楽へのはなむけをしてくださったのは、高校生のとき、奈良県立大宇陀高校教諭であり、北原白秋の高弟、国語担当の木水弥三郎先生、同じく物理学の教諭宇賀神博先生(後の奈良県議会議員)、および同じく音楽担当高田織江先生でした。木水先生はお手持ちのSPレコードをありったけ学校へ持ち込んでレコードコンサートを開いてくださり、「田園」交響曲をかけたときは、「とにかくカッコウが鳴くまで聴きなさい!」と申されました。宇賀神先生は1ワットの当時としては大出力アンプを組み立てて、再生装置のハードも担当しておられました。一方、私が曲目紹介のため黒板に「・・・奏明曲」と書いたら、「・・・奏鳴曲」と直してくださいました。高田先生はクラブ活動で私にコーラス・グループのバリトン・パートのリーダーを、のちには指揮者の地位を与えてくださいました。当時私はテナーの音域に迫る下の「ソ」から上の「ソ」まで楽に出ました。今は亡きこの三人の恩師に心から感謝いたします。

 私にオーディオの楽しみを教えてくださったのは、同じ医局の一年先輩の故東朋嗣博士でした。医学研鑽の余暇に自宅に呼んでくださり、楽しいオーディオ談義をいたしました。私のオーディオ趣味は先生から頂いたシュアーM44Gカートリッジから始まりました。私の”本格的”ステレオは、そのシュアーM44Gをこれも先生から頂いたグレースG540Lのアームに取り付け、これだけ自前で買ってきたフォノモーター、マイクMB400Sを自作のケース(冒頭写真のケースは三代目として作り直した渾身の作)に取り付けてコードプレーヤーとしました。アンプはトリオTW-31、これでパイオニアPE-16スピーカー(指定のバスレフボックスを自作)を鳴らすことから始まりました。それまでセラミック・カートリッジでレコードを聴いていた耳にはマグネチック・カートリッジの豪華な音は別世界のものに聞こえました。後年東先生からはマッキントッシュのアンプまで戴きました。今でも、先生のついのスピーカー、「タンノイGRFに劣らない良い音で音楽を聴くこと」が私の一つの目標になっております。

 (このページを作成するに当たり、音源をお持ちのサイトに許可なくリンクを張らせて頂きます。ただし、直リンクはしておりません。サイトの制作、管理者にお礼を申し上げ、心から敬意を表します。)

 

 


 真空管アンプの勇姿。ラックス・キットのメイン A3500 と プリ A3300。昭和52年に私がハンだごてを握って組み立てました。これを製作したとき、当時小学一年生だった次男が、抵抗値を表すエナメルの色を見て「ちゃ、くろ、き」などと言いながら一本一本選ん渡してくれたのも懐かしい思い出です。シャーシのなかはプロに負けない整然とした配線がしてあります。 もし動作不良でメーカーに持ち込まなくてはならなくなったとき、恥ずかしい思いをしたくなかったからです。真空管アンプは見た目も豪華ですし、電源を入れると写真のように、ポッと灯がともるので、何か命あるもののように思えました。現在も完動品ですから、このようにパワー・オンで真空管のヒーターがオレンジ色に輝きます。さらに、あたりの電灯を消して暗くすると、陽極を通り抜けた電子が真空管のガラスを叩き、紫色に蛍光を発するのが見えて、とても美しいものです。この機種はさほど高価なものではありませんでしたが、当時、唯一マニア用の完成品として売られていた高級真空管アンプ、ラックス SQ38FD を凌ぐ性能を持っており、 確かに端正で美しい音楽を聴かせてくれました。これをメインのマシンとして使っていた頃が私のオーディオ・マニアとして一番充実し、幸せだった頃かも知れません。今でも使ってやりたいのですが、このアンプに使われている、規格の揃ったナショナルの 6CA7 真空管(手前に見える4本)の、どれ一本でももし断線するようなことがあれば、替わりを入手しにくくなっています。誕生したときのままの健康な姿を残しておきたい。そう思うと、飾っておくだけの宝物になってしまうのがなんとも口惜しいことです。

 

AUDIO  目次

 

 

音楽、それはいのちそのもの

それなりの再生装置とは

たった一つだけ越えなければならない垣根がある

「2001年宇宙の旅」の「美しく青きドナウ」

ヴァイオリン・ソナタ K.296

音楽鑑賞免許皆伝、「ファンタジア」

低音こそ大切、出会いこそ大切

静かさあってこその音楽

四季

オーケストラの奥行き

FM音放送で音楽を聴きましょう

アナログレコードをCDにする方法

坂の上の雲

よい音、よくない音(サントリー・ホールとNHKホール)

 

雑誌の付録でオーディオ入門

 


自作のFOSTEX FE-83スピーカー・システム(25Hx18Wx17Dcm). すごい低音も出ます.

スピーカーの工作はオーディオ趣味の原点です.

 

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